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はじめに
われわれはなにをすべきでなにを避けるべきか

『バカと戦うためのゲーテの教え』(祥伝社)より
バカと戦うためのゲーテの教え 表紙
バカと戦うためのゲーテの教え
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人生は楽しいことばかりではない。

毎日の生活もつらいことは多い。働けど働けどなお、わがくらし楽にならざり。

しかし、嘆いているだけでは仕方がない。

人生は一度きりだし、程度の差こそあれ近い将来に人は必ず死ぬ。

だから、毎日の生活を無駄にしないほうがいい。

いろいろ、もっと楽しんだほうがいい。

うるおいのある生活のために、われわれはなにをすべきでなにを避けるべきか?

簡単だ。うるおいのある生活を送った人物に学び、彼がなにを避けたかを知ればいい。

そのヒントにあふれているのが、『ゲーテとの対話』である。

これはドイツの詩人、劇作家、小説家、哲学者、自然科学者、化学者、政治家、法律家であるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの言葉を弟子のヨハン・ペーター・エッカーマンがまとめた書だ。そこには全西欧の教養が集約されている。

ゲーテはあらゆる分野で超一流の業績を残し、恐ろしいほどの洞察力で「人間」を見抜いた。

その仕事を精神的に受け継いだ哲学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは言う。

ゲーテの肖像(シュティーラー画、1828年頃)
シュティーラーによるゲーテの肖像(1828年頃)
エッケルマンを読み、自問してみよ、かつて或る人間が、ドイツにおいて、一つの高貴な形式という点でこれほど遠くへ達したことがあるかどうかを。(中略)私たちはゲーテを飛び越しうるなどとはなんとしても全然信ずべきではなく、むしろ、彼のやったとおりに、再三再四やってみなければならない。(『生成の無垢』)

闇雲にあがいても仕方がない。歴史上、最も高みに達した人物がやったとおりに、われわれは再三再四やってみなければならない。

ゲーテはあらゆる偉大なものを背負った。

毎年モリエール(ジャン=バティスト・ポクラン)の作品を二、三篇読みかえしたのは、彼の偉大な精神に触れるためだ。

ゲーテは言う。

それは、私が偉大なイタリアの巨匠たちの銅版画をときどき眺めるのと同じことだ。われわれのような小粒の人間はこういうものの偉大さを心の中にしまっておくことなどできないからな。だから、ときどきそこへ戻って、その印象を心によみがえらせることが大事なのだ。

私が彼に魅せられるのは、たんにその申し分のない技巧だけではない。とりわけ、その詩人の愛すべき天分、高い教養を身につけた精神だ。彼は作法にかなったものに対する優美な礼儀を心得ている。

ゲーテが言うように、世の中は「低能や狂人」であふれている。

「非学者論に負けず」という言葉があるように、バカは最強だ。
そしてバカが暴走しているのが現在である。

狂気の時代において、正気を維持するためには、長い歴史の中に現在を位置づけ、優れた時代に目を向ける必要がある。

本書はそのために作った。

なお、特に指定がないものは『ゲーテとの対話』からの引用である。

適菜収

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