人生は楽しいことばかりではない。
毎日の生活もつらいことは多い。働けど働けどなお、わがくらし楽にならざり。
しかし、嘆いているだけでは仕方がない。
人生は一度きりだし、程度の差こそあれ近い将来に人は必ず死ぬ。
だから、毎日の生活を無駄にしないほうがいい。
いろいろ、もっと楽しんだほうがいい。
うるおいのある生活のために、われわれはなにをすべきでなにを避けるべきか?
簡単だ。うるおいのある生活を送った人物に学び、彼がなにを避けたかを知ればいい。
そのヒントにあふれているのが、『ゲーテとの対話』である。
これはドイツの詩人、劇作家、小説家、哲学者、自然科学者、化学者、政治家、法律家であるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの言葉を弟子のヨハン・ペーター・エッカーマンがまとめた書だ。そこには全西欧の教養が集約されている。
ゲーテはあらゆる分野で超一流の業績を残し、恐ろしいほどの洞察力で「人間」を見抜いた。
その仕事を精神的に受け継いだ哲学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは言う。
闇雲にあがいても仕方がない。歴史上、最も高みに達した人物がやったとおりに、われわれは再三再四やってみなければならない。
ゲーテはあらゆる偉大なものを背負った。
毎年モリエール(ジャン=バティスト・ポクラン)の作品を二、三篇読みかえしたのは、彼の偉大な精神に触れるためだ。
ゲーテは言う。
私が彼に魅せられるのは、たんにその申し分のない技巧だけではない。とりわけ、その詩人の愛すべき天分、高い教養を身につけた精神だ。彼は作法にかなったものに対する優美な礼儀を心得ている。
ゲーテが言うように、世の中は「低能や狂人」であふれている。
「非学者論に負けず」という言葉があるように、バカは最強だ。
そしてバカが暴走しているのが現在である。
狂気の時代において、正気を維持するためには、長い歴史の中に現在を位置づけ、優れた時代に目を向ける必要がある。
本書はそのために作った。
なお、特に指定がないものは『ゲーテとの対話』からの引用である。
