本書の目的は過去の保守思想の仕事を独自の新しい視点で捉え直すことではありません。代表的な保守思想家の言葉を引用し、言い古された説明を繰り返すことです。
私は「言い古されたこと」を繰り返すことが大事だと思っています。言い古されたことは、大事なことだから言い古されているのですから。
私が普段やっている仕事も同じです。それは「新しいもの」をなるべく書かないように注意しながら、古今東西の賢者の知恵を右から左へ書き写す作業です。
詩人、小説家、自然科学者、化学者、政治家、法律家のヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテはこう言いました。
それから、真理というものはたえず反復して取り上げられねばならないのだ。誤謬が、私たちのまわりで、たえず語られているからだ。(エッカーマン『ゲーテとの対話』)誤謬は私たちのまわりで、たえず語られています。
現在、近代の負の側面が大衆社会という形で暴走しているように見えますが、「保守」という言葉の定義も完全に混乱しています。今では、新自由主義者、右翼、単なる反共、権力に阿る乞食言論人、情弱のネトウヨ、卑劣なヘイトスピーカー、デマゴーグ、反日カルト、陰謀論者といった保守の対極にある連中が、白昼堂々と「保守」を自称しています。
結果、わが国では「保守=バカ」という方程式が成り立つようになりました。
しかし、これから本書で述べる通り、保守とは、近代理念の暴走を警戒する知的で誠実な態度のことです。
近代の正確な理解がないところに保守は成り立ちません。
また、近代を成立させる原理であるナショナリズムですら、わが国ではほとんど理解されていない。
こうした状況は極めて危ないと思っていたところ、『月刊日本』編集部の中村友哉氏から、引用をメインにした保守思想の解説をしてほしいというオファーがありました。本書はその成果です。
本書は引用だらけです。
引用がメインで、私の説明はサブです。なるべく余計な言葉はつけ加えないようにしました。
「近代」「大衆」「全体主義」「ナショナリズム」「歴史」といった章見出しはあくまで便宜上の分類です。すべて保守思想と密接に関係しています。
自由主義者であるエドマンド・バークが、あえて「保守主義」を唱えたのは、フランス革命という狂気に直面したからです。われわれもまた正気を維持するために保守思想を振り返らなければならない時代に直面しています。
この続きは、書籍でお楽しみください。
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